地域通貨「おうみ」視察報告書 (作成:ボダイ事務局)
 
○日時
平成16年1月10日(土)〜11日(日)
○行先
滋賀県草津市、長浜市
○参加者
栗焼昇(豊前シール事業協同組合、 プロジェクトボダイ理事長)
山本信宏(豊前シール事業協同組合副理事長)
永吉祐子(豊前シール事業協同組合事務局)
五家英安(豊前市役所商工観光課)
寺家光洋(プロジェクトボダイ事務局)
○視察目的
地域通貨の草分け的存在である「おうみ」の現地を視察して担当者に実際の運用のノウハウを聞き、豊前市において地域通貨を流通できるか可能性を探ることが目的である。また長浜市の「黒壁ガラススクエア」を中心とした「まちつくり」の見学が目的である。

草津市
【湖南の商工業・住宅都市】
近江盆地の最南端、琵琶湖の南東に位置する。江戸時代には、東海道と中山道が分岐合流する宿場として繁栄。現在は、電機など機械系企業が集積する県下第1の工業都市で、湖南地域の商工業・経済・>交通の拠点。また、京阪神圏のベッドタウンとして人口が増加。全国的にも高水準の人口増加率を誇る。
【都市基盤の整備】
広域交通網整備により電機・機械メーカーが立地する一方で、宅地開発も進む。草津駅周辺整備や、南草津駅を核とする南部副都心整備などが進行。天井川による市街地分断の解消と治水をめざす草津川改修事業は、02年6月に新川への試験通水を開始。
面積48.22キロ平方メートル人口111,567人世帯41,779世帯

長浜市
【湖北の中心】
琵琶湖の北東部に位置し、秀吉の長浜築城以来400余年間、湖北地方の中心として栄える。明治初期に、県下初の小学校や国立銀行が設立、さらに県下初の鉄道が開通するなど進取の気性に富む。近畿・中京・北陸3圏の接点として、独自の文化圏を形成。
【黒壁スクエア】
北国街道沿いの中心市街の「黒壁ガラススクエア」には年間100万人が訪れ、商店街、市街地の再生・活性化モデルとして全国の注目を集める。また、文化や知恵を現代に生かし、新文化を生む、個性と魅力あるまちづくり「新博物館都市構想」を策定し推進中。
面積45.50キロ平方メートル人口58,489人世帯19,529世帯

T 地域通貨「おうみ」
 
@誕生から現在まで
地域通貨「おうみ」が誕生したのは1999年の4月である。その前年開設された「草津コミュニティ支援センター」の使用料を現金だけではなくクーポン券で支払いできないかと事務局で検討され始めたことに起源がある。「草津コミュニティ支援センター」とは市所有地の施設を財団法人草津市コミュニティ事業団が運営しているものである。
これはお金という一元的な決済方法だけではなく、ボランティアでセンター運営や事業を支える活動に対して「おうみ」を発行し、「おうみ」をセンター使用料として支払うこともできるシステムとした。やがて「おうみ」は施設内の支払い機能はなくなったが、「支援センター」から独立して、地域通貨として広がりをみせる。事務局も「地域通貨おうみ委員会」として発足し、2002年4月にはNPO法人として認証を受ける。現在では専用の活動拠点「ひとの駅」を開設し、商品券的性格を持った「ありがとう券」また琵琶湖の生態系を守るための「ノーリリースありがとう券」の発行など地域活性の活動とともに、地域通貨の手本として全国からたくさんの研修、視察を受け入れてる。
A現在のしくみ
「おうみ」を利用するためには、まずユーザー会員登録をする。年会費500円を「地域通貨おうみ委員会」に提出し、その際に100円を寄付するごとに1「おうみ」を受け取ることができる。(あるいはサービスを提供することによっても受け取れる。)同時に「交換リスト登録」に自分が提供できる物やサービスを登録する。反対に自分が提供してほしい物やサービスも書き込んで登録することができる。「地域通貨おうみ委員会」ではこれら登録リストに掲載する情報を集めたり、「できること」や「してほしいこと」をコーディネートする。「おうみ」の概要・特色は以下のとおりである。
  • 1おうみ=100円の社会的価値に相当
  • 種類は「1おうみ」と「10おうみ」の二種類の「紙券発行型」の地域通貨
  • 90分のサービス=「10おうみ」を基準として各自判断して使用する。
  • 「おうみ」を使用するときは裏書をして流通経路をわかるようにする。
  • 有効期間は6ヶ月である。
  • 現在およそ6700おうみ=67万円が流通している。
  • 現在200人ほど登録している。
「おうみ」はこれら交換リストのサービスだけでなく、フリーマーケットの支払いや「ひとの駅」での支払い、など流通経路は広がっている。タクシー代や映画館で使用できるようになったことは注目されている。
Bおうみファンド
「おうみ」のユーザー会員登録の際、寄付されたお金は「おうみファンド」として形成される。「おうみファンド」は市民によるコミュニティのための積立金であり、その活用方法はそれぞれの目的ごとに活用します。
Cおうみ貸出制度
「おうみ」を活用して活動の活性化などを図ろうとする団体に一定期間「おうみ」を無償で貸し出しするものである。
実績
◇大津市のNPO法人「HCCグループ」
ボランティアとして活動に参加した人に「おうみ」を配布し、毎月独自に実施する「おうみマーケット」で野菜や手作り品などと交換できるようにする。
◇守山市の「守山ステーション」
生ゴミの堆肥化への協力者に「おうみ」を配布し、その堆肥で作った野菜を「おうみ」で手に入れる事業(やさいくるプロジェクト)。この制度によって相互交流やネットワークつくりなど大きな成果をあげることができた。

U 「びわこづち」
地域通貨おうみ委員会が草津コミュニティ支援センターから独立して事務所を商店街の中に移した頃から商店街との関りもできてきた。その当時商店街では空き店舗も多く、商店街の活性化のために考えられたのが「びわこづち」である。
「びわこづち」のシステムは豊前シール事業とよく似ている。草津商店街の20店舗で買い物した客は「おうみシール」を受け取り「びわこづち交換券」の裏に貼っていく。10枚貼って万冊になれば一個のびわこづちと交換でき100円の商品券として使用でき、また福引券としても使用する。このようにして発行された「びわこづち」は、商店の中で流通したり買い物客に再度プレゼントされたり、おうみシールに生まれ変わったりしながら地域内で循環していった。 この「びわこづち」の通常のシール事業との相違点は環境を重視し地域活性化をめざした事業であったことである。つまり協力店の
シール配布基準は商品の値段に応じて配布するのではなく、地域経済活性化の評価やゴミの減量(買い物袋持参等)効果、環境配慮行動(自転車で買い物)の評価で配布された。またこの「びわこづち」も琵琶湖の水質保全のために浚渫(しゅんせつ)された泥土でつくったコインであった。
しかしこの「びわこづち」は県から補助金を受けて製作していたのでコスト面で採算が合わなくなり、「おうみありがとう券」が誕生することとなるのである。

V 「おうみありがとう券」
 
@生い立ち
地域通貨おうみによって出来上がったネットワークの中の団体に国土交通省からの助成で川の清掃に取り組んでいるボランティア団体があった。その川の清掃のお礼としていままではジュースなどを配布してたが、それを「おうみ」で支払いたいと相談を受けた。しかし「おうみ」では商店街で使用できず、ボランティア活動促進と地域経済活性を目的とする商品券「おうみありがとう券」のシステムを2002年10月からスタートさせた。
A概要特長
  • 印刷、販売はNPO法人地域通貨おうみ委員会が行っている。
  • 草津市商店街連盟加盟店全店(約350店舗)で使用できる。
  • 一枚100円の買い物ができる。 高額の場合、偽造の問題や釣り銭の取扱等が複雑になることから、ならびにボランティア活動の現場でも活用されることを考慮して小額のものにした。
  • 有効期限は6ヶ月である。 財務省への登録申請などの制約からのがれられ、「ありがとう券」の滞留を防ぎ利用促進につなげた。
  • 印刷に偽造対策を施してる。
  • 個人は換金できないこととする。
  • 裏面に「メッセージ欄」を設け配布者の気持ちが伝わるようにしている。
  • 毎月20日までに各商店街会長が回収された「ありがとう券」を取りまとめ月末までに支払いする。商店は換金率9割となっているため、すぐに換金されずに地域内で使われ続けていく仕組になっている。また、換金された残り1割は、福祉事業や失業対策を行うNPOに寄付されるなど、コミュニティ活性化にも役立ってる。
  • 試験運用時およそ30万分配布。「草津市民の日」100万円分配布。 去年もおよそ100万円分の販売。回収実績はおよそ9割。
B「ノーリリースありがとう券」
滋賀県では琵琶湖の生態系を脅かす外来魚「ブルーギル」と「ブラックバス」の駆除のため釣ってきたこれらの魚と引き換えにクーポン券を配布することとした。そのシステムとして「ありがとう券」が利用された。外来魚の重量500グラムごとに1枚のノーリリースありがとう券を配布した。券のデザインなどは「ありがとう券」とまったく同じであったが、期間限定であったためと外来魚駆除の目的を全面に出すために「ありがとう券」の前に「ノーリリース」を入れることとした。 県内13箇所に外来魚引換所を設け「ノーリリースありがとう券」との引換をした。また使用に関しては従来の草津市商店街だけでなく、県内32箇所のホテル、ガソリンスタンドなどが協力店舗となった。

W. 豊前市に地域通貨を導入することについての考察。
 
地域通貨は社会的に必要とされながら現在の市場だけでは成り立ちにくい価値を支えると共に、コミュニティを再構築し市民が主役となる地域社会をつくるために活用する道具である。しかしながら現状の地域通貨「おうみ」を検証すると商品券的性格を持った「ありがとう券」の出現によりその影が薄くなりつつあるように思われる。地域通貨が市場と連動した時、地域通貨の存在価値がなくなるとの考え方もあるようであるが、地域通貨は市場と連動することによりその可能性を一層広げ地域経営や循環型社会の構築などに貢献するものと考える。
その意味において豊前市においては新たに地域通貨システムを構築するよりも現在「豊前シール事業協同組合」で市より委託して販売を行っている「お買い物券」を「おうみありがとう券」のようなより環境、福祉、ボランティア、地域活性に役立つような商品券にすることが望ましいと思われる。